結婚相談所物語

普通の男の普通の結婚

久し振りに大学の研究室時代の友から連絡があり飲みに行った。

卒業以来だから実に十年振りに近い。

お互い研究所勤めだとあんまり外に出ることもない。

これが、営業だったりしたら出張とかあって交遊も広げられるのにな、

と言ったところで友はもう家庭もあって二児の父、

しかも7歳上の姉さま女房と聞く。

ヘーと驚くと、驚くことはないよ、アイツなんか子供四人だぜ、

と懐かしい名前を挙げた。

確かアイツは大学に残ったと聞くが、

お前もアイツもよっぽど環境が良かったんだな、

研究所や大学で嫁さん見つかるとは。

すると友は言った。

とんでもない、そんなの無理だろ。

パーティーだよ、パーティー。

婚活パーティーで見つけたんだよ、

と衝撃の答えが返ってきた。

因みにアイツの四人の子宝は双子が生まれて数を稼いだんだとか。

なるほどね。



でも俺はパーティーなんかごめんだな、と呟くと、

ああ、お前には無理だろうな、と友も言う。

でも俺はごく普通だぜ、

普通だけどパーティーは無理ってやつ多いだろ?

しかも周りに女性がいないって俺みたいなやつ、少なくないだろ?

それともやっぱり特殊なんだろうか、

と何とも暗澹たる気持ちになった時、

ああ、お前は普通だ、

だから普通の結婚相談所で普通に婚活すればいいだけの話じゃないの?

と友はさらりと言ってのけた。

あっそう。今更ながら目から鱗の思いがした。



で、今プロフィールを書いている。

書いているとやっぱり俺って平凡だなと思ってしまう。

大学の博士課程まで出た、と言ったところで今時珍しくもない。

通信関連会社の研究開発部門、って言ったところで

ちょっとオタクっぽく聞こえてそれはそれでいただけない。

収入はと言えば多くも少なくもなく、結局おしなべて中庸。

だから思いっきり普通にマジメデケンコウ、と書き込んだ。

そんな俺が求めているのはやっぱり普通の人との普通の結婚だから

そりゃあそうなるわな、と改めて納得した。

これが俺。ごく普通の男。

これ以上でもこれ以下でもなし。



普通の男がいるように普通の女性もいるもんだ。

いや、それは失礼な言い方だな。

普通の結婚を望んで普通の男でいいという女性、という意味だけど。

この先どうなるか分からないけど、優しくて頼もしい方を、

という希望はちゃんと受け止めていこうと思う。

一応は頼りにします、はい承知しましたってことで話がまとまったのだから。

男って単純だから頼られると弱い。

普通の男でも精一杯頑張ろうという気になる。

いや、普通の男だからこそ、単純に頑張ろうと思えるのかな。

まあいい。

この先十年経っても俺は、いや僕は

普通に彼女を大切にして仕事に精を出し、

一緒に家庭を守っていくつもりであります。




マリッジ・コンサルタント 山名 友子