結婚相談所物語

画竜点睛

"画竜点睛を欠く"と聞けば、


そうそう最後の仕上げが肝心よね、


と結びつきますが、


その画竜点睛を欠いた状態というのも大切だ


というのがこのお二人です。


頭脳明晰な彼は将来を期待されている准教授です。


ですが決して堅物ではなくどちらかと言えばお喋り好き、


その絶対的知識量の豊富さから話題には事欠かず、


会話上手でもあります。


そこは彼の利点であり魅力なのですが、


実は一点気になるマイナス部分もあるのです。


果たしてそこの部分が女性にどう映るのかが


ご縁の決め手になるなと案じていました。


一方の彼女は三姉妹の三女。


長姉がこちらで素敵な起業家と縁がまとまったのを見て


迷わず入会してくれました。


すらっとした美人さんで、


さすが三姉妹だけあってセンスも抜群、


育ちの良さが性格にも表れていますし、


彼女がいるだけでその場が明るく華やぎます。


准教授の彼とは条件もさることながらとても気が合う様子で、


引き合わせてよかったとつくづく思いました。


毎日電話で1〜2時間も話しているのを見た父親に、


毎日話して尽きない相手は世の中にそういるものではない、


と言わしめたそうですが、


おそらくご両親も話がまとまるのを


心待ちにされていたことでしょう。


ところがいざとなると彼女が躊躇します。


理由を尋ねると「電話で話していると


楽しくていいのだけれど会うとがっかりするんです」


と言いにくそうに打ち明けてくれました。


ああ、やっぱり。


実は彼は垢抜けない、


決して身なりが悪いというのではないけれど、


ただファッションセンスがあまりいいとは言えないのです。


普通でもそう思うのですから、


特にお洒落な彼女にしてみれば痛恨の極みなのでしょう。


彼女の気持ちは分かります。


三姉妹の中で優しく育った彼女ならではの遠慮があって、


立場ある男性に、


その服装やめてくれます?


なんてことは言えないのでしょう。


でも、そこは考えようです。


これぞ画竜点睛。


彼のファッションセンスはゼロだからこそ達成できる画竜点睛。


彼女がプロデュースして彼を話し上手な准教授から


話し上手でお洒落な准教授に仕立て上げていけばいいのです。


結婚はゴールではなくてスタートです。


これから築き上げていくものです。


だったら完成品ばかりでスタートして


後はメンテナンスだけというのでは味気ないでしょう。


だけど未完成な部分もあってスタートすれば


作り上げていく喜びがあります。


達成目標が明確になっているのであれば尚更です。


未完成の部分が結婚生活の根幹に


関わるような重大なことではない限り、


自分たちで仕上げていく余地があるというのは


むしろ大切なことではないでしょうか。


画竜点睛を欠く、


しからば両人で描き入れよう―


そう意見が一致する人を見つけることこそが、


いいご縁に繋がる極意だと思うのです。


ファッションセンスも勘もいい彼女は


一瞬にして意図を読み解いて、


スピード成婚を成し遂げました。


今頃は、


教壇に立つ今日はこのシャツ、


学会に出る明日はあのスーツ、


と専属ファッションコーディネーター付きの


素敵な准教授が益々活躍されていることでしょう。


画竜点睛を欠くというのは


可能性を秘めた言葉でもありますね。


お二人で上手に描き入れていってください。


末永くお幸せに。


マリッジ・コンサルタント 山名 友子