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言霊宿る一言

言霊というものがあるのなら、この賢い女性の一言にはまさにそれがあったのかな、と思うことがあります。


彼女は関西の有名国立大学を卒業した国家公務員で、名実ともにキャリアウーマンでした。でも、彼女の聡明さは、その学歴や職歴だけではなく恋愛においても発揮されたように思います。


お相手はまだ歯科医の研修生。実は有名私立大学を卒業したのですが、方向転換して歯学部に入学し直したため、社会に出るのが遅れ、年収も僅かでした。同年代でしかもお互いインテリの2人は何かと価値観が合い、婚約の話に進むまで時間はかかりませんでした。


ところが彼女の母親はこの結婚に難色を示したのです。彼の年収が低いし、何よりも彼の方からの唯一の条件が同居ということだったからです。自慢の娘かわいさの母親の心境から、どうしても認めがたいものがありました。


一方彼の母親はとても教育熱心な方でした。彼やその兄弟に対しても「お金はすべて教育に使いました」とご自分で仰る程。


もちろん愛情一杯の熱心さだったのですが、その愛情を注ぎ込んだ子供の結婚相手となると、何かと厳しい見方をされる方でもありました。私の目からも、同居となるとかなりやりにくいだろうなと、思わせる母親でした。


それでも彼女は、彼の年収で足りない分は自分の働きでカバーします、どうせ共働きなのだから同居はむしろ有難いです、と自分の母親は説得できました。問題は彼の母親です。


正直なところ私は彼の母親の方が難関だと思っていました。彼女が彼の家に挨拶に行くという日は、息子より高学歴で高収入の彼女が生意気だと思われやしないだろうか、冷たくあしらわれて傷つかないだろうか、と一日中心配でした。


翌日、彼女から報告がありました。「あのお母様となら一緒にやっていけます」


事細かなことなど彼女は言いませんし私も聞きません。その一言だけで充分だったのです。もちろん私もそのまま彼の母親に伝えましたが、この一言が心を融かしたのでしょう。彼の母親はしばらく無言で、ややあってこうつぶやきました「そうですか。そのように言っていましたか」と。それからとんとん拍子に事が運んだのは言うまでもありません。


彼女にしてみれば、共働きをするためにも同居の利点を活用させてもらおう、そしてどうせなら、賢く戦線を張ろうじゃないかといったところでしょう。


彼の母親も子供に対してはもとより愛情深い方なのですから、懐深く入ってしまえば良かったのです。今やよき嫁姑として仲良くやっていることでしょう。


「あのお母様となら一緒にやっていけます」まさに言霊宿る一言だったように思います。




(大阪支社 山名)





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