結婚相談所物語

愛のかたち

何が不足ということではない


むしろそんなもったいないこと、


なんて言われなくても分かっている


彼を紹介されたとき、


ああ目の涼やかな素敵な人、と思ったわ


平凡な私に充分な人、


と本当にそう思っている


だけど・・・


決めきれない、


心が定まらない自分がいる・・・


なぜ?


・・・私は何を求めているのかしら?


え?


・・・私は何かを求めている?



隣の若いカップルは


可愛らしく手を繋いで本当に微笑ましい


あのお似合いの二人は


やっぱり気のきいた言葉で愛をささやくのかしら?


むこうのご夫婦は


もはや阿吽の呼吸という感じ・・・



余り女性が周りにいなかったから


どう付き合ったらいいのかわからない


彼はそう言う


言葉下手、


だから気のきいた言葉をかけてくれないの?


愛情表現が苦手、


だから手を繋いで歩いてくれないの?


だけどこれからの二人のことを考えてくれている


それであとは私がどうすればいいのかしら・・・



出たばかりの電車を目で追って次の電車を待つ間、


駅のホームでぼんやりといつもの問答を繰り返す。


今改札で別れたばかりの彼のこと。


私は恋の形に溺れているのかとふと思う。


でも仕方がないじゃない女なんだから、


と自分を慰める。


と、その時だ!


私は何気なく改札口を振り向いた。


あれは・・・もしかして・・・彼?


もうとっくに帰ったと思っていたのに・・・


改札口に彼がいる。


私の好きな目でじっとこちらを見つめている。


私は一番前に並んでいた列を離れ、


最後に電車に乗り込んだ。


閉まるドアに張り付いて彼を追う。


見送ってくれている彼と私。


電車が加速する。


目の端に踵を返す彼がいた。


その瞬間私は気が付いた。


ああ、寡黙な彼はいつも雄弁な目で語ってくれていた。


私だけに向けられるあの目で。



私たちの愛の形はこれだった


だから今決める、私は決める


私、彼と結婚します


マリッジ・コンサルタント 山名 友子