結婚相談所物語

女医さんの結婚(中編)

「でもね、一つだけ忘れていたことがあったの。


結婚して子供を産むこと、これを忘れていたの!」


お忙しい毎日だったそうです。


強い責任感から仕事を人に任せられず、


やっと後輩が育ってきたかなとほっとした時に、


もう一つの大事な夢を思い出したそうです。


ご職業柄、自分に余り時間がないのはよくご存知でした。


だからこそ、その道のプロにすがってこられたのでした。


説明もそこそこに、


「分かりました。お任せします。


お相手は同業者にこだわりません。人物本位でお願いします。」




さて、魅力的なこの女医さんを、


素敵なお母さんにして差し上げなければなりません。


お相手はドクターに限らないという


広い入口を用意していただいたお陰で、


幅広くお相手のご紹介が可能になったのですが、


偶然にも開業されているドクターでした。




私たちはこのご縁を何とかまとめたいと願い、


お二人も順調に気持ちを紡いでいかれたのですが、


何せハードなお仕事柄、


ありがちな気持ちのすれ違いを修復できないでいるうちに、


彼女に諦めがよぎりました。


気まずい空白の時間が流れます。


「すれ違いはどのカップルにもあること。


気持ちがあるのなら、あなた、できるだけ彼女のところへ行ってあげて。


言葉は要らないからとにかく彼女のところへ行って!」


彼にアドバイスしたのはこのことだけでした。


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マリッジ・コンサルタント 山名 友子