「自慢の子」ほど、親はついてくる。
優子はその日も、それを確信した。
「なかなかね、国際線でヨーロッパ路線っていうのはエリートらしいんですよ」
母親は小鼻をひくっとさせて言った。
「お母さん... 」
恵は母親が自慢に走りそうになるのを目で制した。
優子はその様子を小さなメガネの下から上目遣いに見て微笑む。
「エムロードには優秀で素晴らしい男性がたくさん登録されていますからね。きっとおめがねにかなう方がいらっしゃると思いますよ」
「弁護士かお医者様はいらっしゃいます?」
「もちろんいらっしゃいますよ」
母親の顔がぱっと輝いた。
しかし、恵は浮かない顔だ。
優子はそれを見逃さなかった。
「恵さんは、どんな方と出会いたいんですか」
恵はきっぱりと言った。
「私、ときめきたいんです。お見合いで、そんなこと、可能でしょうか」
母親は目を見開いて言った。
「何言ってるの、この子は」
しかし、優子はきりっと口角を上げて言った。
「恵さんのおっしゃるのは当たり前ですよ。お母さん、結婚は条件だけではできないんです。一生ですよ。一生、寝食を共にするんです。子どもさんを生んで、夫婦でその子を一人前に育てていく。だから、ときめいて、この人しかいないって思わなかったら、結婚なんかできないんじゃないですか」
恵はうれしそうに笑った。
母親はちょっと憮然としていたが、優子の言葉に小さくうなずいた。
二人は丁寧にお辞儀して帰っていった。
恵もその母親も、色違いで高価なブランドのバッグを手にしていた。
「あら、お揃いですね」
「この子がパリで買ってきてくれたんです」
母親がうれしそうに言った。
恵は恥ずかしそうにしていた。
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