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〈13〉 アルバムを携えて

 

 それから半年後。火曜日の夕暮れどき。

 

 亮一はエムロード神戸支社を訪れた。手には分厚いアルバムを携えて。

 

 アルバムには初めて両家が顔合わせした食事の席から、結納、結婚式、披露宴、ハネムーンと、まるでストーリーのような写真が詰まっていた。

 

 それをめくるたびに亮一はいつも不思議な気持ちになる。

 

 心を決めてからのスムーズな流れのようなものを感じるからだ。

 

 それはあらかじめエムロードという場所で「結婚」を前提にしているから出来上がった流れのようにも思える。

 

 それと同時に、ただ見えなかっただけで本当は決まっていたことのような気もしてくる。

 

 結婚というのは何かを受け入れることでもある。亮一には、そんな気がするのだった。

 

「こんにちは」

 

 もはや余裕の表情で亮一は挨拶した。

 

「あら。亮一さーん。こんにちは」

 

 優子と幸子、そして他のマリッジコンサルタントが彼に駆け寄った。成婚する前の人気ぶりと変わらない。

 

「本当にお世話になりました」

 

「わざわざ今日、挨拶に来てくれるっていうから、私、残業して待ってたのよ」

 

「優子さん、残業って... ただ待ってただけじゃないですか」

 

 幸子が口元に手を当てて笑う。が、ハッと気づいて目を泳がせた。

 

「奥様は? ご一緒に来られるはずじゃ... 」

 

「今日はあっちが遅刻です」

 

 苦笑いする亮一に、オフィス中が爆笑になった。

 

3時間も、場所を変えてまで待っててくれたから、決めたのにねえ」

 

 そこへ、里奈が現れた。

 

「すみませーん」

 

 髪を切り、結婚前よりも穏やかに落ち着いたふうだった。手にケーキの包みをもっていた。

 

「これ、どうしても皆さんに食べていただきたくて。予約してあったので」

 

「でも遅刻だよ。結婚したら結局、元通りだよなあ」

 

 そう言いながらも亮一の顔は幸せでいっぱいだった。

 

 優子はその笑顔を見ながら「この仕事も悪くないな」と改めて思った。

  

 永遠の愛に気づいた二人を見ることほど、うれしいことはない。

 

「あれ。ここ、こんなに景色がきれいでしたっけ?」

 

 亮一が驚いたように窓の外を見た。

 

「私は気づいてたわよ。ね、優子さん」

 

 いたずらっぽく目配せする里奈に、優子はやさしく微笑んだ。

 

 窓の外には二人の今までを全部見てきた神戸の街が、夜景に姿を変えてきらめいていた。

 

 

おしまい

 


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