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〈10〉 結婚向きな女、恋愛向きな女

 

 二度、三度と、亮一は二人の別なタイプの女性とデートを重ねた。

 

 初田百合とは、無難な和食、それから昔からある洋食の店に誘った。

 

 そんな店が百合との時間にはよく似合う気がした。ほっこりする、というのだろうか。

 

 百合は必ず待ち合わせの時間の30分ほど前に来ていた。亮一はいつも遅れがちで、彼女が待っているという状況が続いた。

 

「いつもごめんね」

 

 そう言っても百合はにこやかに首を振った。

 

「大丈夫です」

 

 二人の会話はいつも適度な笑いと適度な和やかさに包まれていた。

 

 しかし、何か物足りなかった。

 

 百合はずっとここにいてくれる。だから亮一が追いかけたり気をひいたりする必要がないのである。

 

 対して、里奈は違った。

 

 二度のデートとも、待ち合わせに遅れてくるのは里奈だった。

 

「ごめんなさい」

 

 あっけらかんと言っては、すぐにそのことを忘れるようだ。そして大きな笑い声や長い腕でアクションたっぷりに話す姿に、亮一も遅刻のことなんか忘れてしまうのだった。

 

 一緒に会っていても、仕事だろうか、友達からだろうか、電話が入ることがあった。

 

「ちょっと待っててくださいね... あー。里奈です。すみませーん... 」

 

 そう言って席を離れてはすぐ戻ってくる。

 

 白ワインが好きな里奈とは、二度ともイタリアンレストランだった。

  

「で、亮一さん、結婚相談所って、似合わないですよねー」

 

 ほろ酔いになってはそんなことを言って笑っている。

 

 亮一は里奈には「ほっといたら誰かに取られるんじゃないか」という思いが常にあった。

 

 この人は自分のものにしておきたい、そう思わせる何かが里奈にはあるのだった。

 

「結婚向きなのは百合さんなのかなあ」

 

 そう思いながらも、なぜか里奈のことばかり考えるようになった。


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