初田百合が亮一に一目惚れしたのと同じように、白石里奈もすでに亮一にぞっこんだった。
お見合いから帰ると、白衣姿ではない父親が玄関まで出迎えた。
「ただいま」
「おかえり。どうだった」
「どうって」
里奈は父親の顔を見てにやっと笑うと、脱いだブーツに防臭スプレーをふると、玄関の端に丁寧に揃えた。
「ほう。気に入ったな」
「なんでわかるの」
「なんかいつもより仕草が女の子らしい」
「そうお」
ささっとバッグをとると、今度は逆らうように男の子っぽく肩にかけて自分の部屋へと廊下を歩いた。
「待ちなさい」
「なあに」
「相手は医者らしいな」
「そうよ」
「落とし方を教えてやろうか」
「へえ。お父さん、賛成なの?... でもね、落とすのは向こう。私は落とされるかどうかよ。お父さんみたいに呑み歩くタイプだったらヤだなあ」
「ふん。えらそうに。高ビーじゃダメだぞ。さっぱりしすぎてもダメ」
それだけ言うと、父親はリビングへ戻っていった。
ちょっと顔が赤かった。また好きなモルトで酔っ払っていたのかもしれない。
里奈は、クスッと笑いながら階段を上っていった。
その助言が役に立つ日が来ようとも思わずに。
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