二つのお見合いが終わった数日後。
亮一はエムロード神戸支社にやって来た。「電話でもいいのよ」と優子は言ったが、何か話したいらしかった。
「こんにちは」
入ってきただけで、その場が華やぐだけの何かが亮一にはあった。優子だけではなく、幸子も他のコンサルタントも立ち上がってにこにこと歓待する。
「さすがに人気者ねえ。じゃ、ちょっと私が独り占めしようかな」
優子が立ち上がると、幸子も寄ってきた。
「いえいえ。ずっとこの支社にいるのは私のほうですからね」
「確かにね」
二人は笑いあって亮一をブースに案内した。
「どちらも素敵な方だったでしょう」
「いやほんとに、素晴らしい方を紹介してもらえて、ありがたいです。それぞれ、素敵な方で。ぼくの理想をちゃんと理解してもらえているなと思いました」
幸子が言った。
「初田さんからも白石さんからも、お付き合いしたいという返事が返ってきてますわ」
「はあ」
困ったようにうつむく亮一に優子がやさしく言った。
「もて過ぎて結婚できなくてここへ来たのに、また困るわね」
「いや、そんなことは」
亮一は思い切ったように話し始めた。
「実はぼく、そんなに恋愛経験はないですよ。一度だけ、大きな失恋があるくらいで」
「へえ。あなたが、失恋」
優子は意外な顔をした。彼にはそんな翳りなど微塵も見えなかったからだ。
「インターンの頃に、ある有名なタレントと付き合ってたんです。それで結婚しようとまで思ったんですけど、彼女は事務所に猛反対されて、ぼくは両親に猛反対されて... 」
その時のことがぱっと思い浮かんだのか、亮一は一瞬言葉を詰まらせた。
「あの時、彼女はもう芸能界辞めるとまで言ったんです。それなのに、ぼくは親の反対を押し切ることができなかった。今思えば、結婚してたらその彼女とうまくいったかどうかはわかりません。でも、相手があそこまで思いつめてくれたことを、ぼくは親の反対で翻してしまった。そのことに、ぼくは今でも自分が歯がゆいんです」
情にもろい幸子はもはや目に涙をためていた。
優子は亮一の顔をじっと見つめていた。
「その頃のあなたはまだ結婚への自信がなかったのね。でも、時間が経って、いろんなことに気づいてよかったじゃないですか。今度はあなたの意思で、あなた自身が納得して、一生愛せる人を探しましょうね」
亮一は、食いしばった口元をゆるめて、うなずいた。
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