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{9} 始まったもめ事

 

 9月の祝日に、謙治と絵梨子の結納がとり行われることになった。

 

 その数週間前に、今度はエムロードに絵梨子がやってきた。

 

「優子さん、ちょっとご相談があるんです」

 

「ごたごたし始めてきましたか」

 

 優子は大げさに明るく言った。

 

 絵梨子は驚いてその顔をまじまじ見た。

 

「なんでわかるんですか」

 

「世の常よ」

 

 優子は腕を組んで、老眼鏡を鼻にずらした。

 

 その表情にちょっと笑いそうになりながら、絵梨子は席についた。

 

「うちは田舎なので、何かにつけておおげさなんです。私、もうこんな年齢だし、結婚できるだけでもありがたいのに。結納の金額とか、指輪のこととか、いちいち親に言われて。披露宴だってね、うちの父親の関係や親類の数が圧倒的に多いから、うちが出すのが当然だと思うんですよ、私は。それは両親もわかっているんだけど『あまりにもうちばっかり』って、何かにつけて嫌味を言われて」

 

 絵梨子は悔しそうに顔をあげ、肩でハアッとため息をついた。

 

 その話は優子の想定内だった。メガネをはずして机の上に置くと、落ち着いて絵梨子に話し始めた。

 

「絵梨子さん。謙治さんとどうしても結婚したいですよね」

 

 何を今さらと言う顔で、絵梨子は言った。

 

「もちろんです」

 

「じゃあ、これから私の言うようにしてもらえますか」

 

「どうしたらいいんですか」

 

 優子はにやりと笑った。

 

「ちょっと作戦があるの」。


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