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『9』 高島家のガーデン・パーティ

 

 それから三ヵ月後。

 

 沙紀は幸平を自宅のガーデン・パーティに招待した。

 

 梅雨明けの猛暑の前に必ずやる会で、父親の腹心の部下たちや近所のゴルフ仲間、母親の友達など、気のおけない人たちが集まる。

今年の初めに芦屋に戻ってきた沙紀は、疎遠になっていた学生時代の友達数人も呼んだ。

 

 6種類のカレーとサラダや温野菜、生ハムやチーズを並べる気軽な会で、ビールと白ワインがあっという間に空いていく。

 

 幸平はこの日、土曜日でも夕方まで仕事をしていた。「少し遅くなるけれど必ず行きます」という返事をもらって、沙紀は腕によりをかけて料理に臨んだ。

 

「サラダのお皿、もう少し大きいといいんだけどなあ。お母さん、木をくりぬいた、ほら、ニュージーランドで買ってきたボール、出してきてもいいかしら」

 

「はいはい」

 

 母親はくすくす笑って、どこかから大きなボールを出してきた。

 

「なんか張り切ってるわね、沙紀」

 

「普通よ、普通」

 

 気持ちを見透かされたようで、沙紀は頬を赤らめた。

  

 5時になると、最初の客が現れた。6時にはもう、大きな庭が埋め尽くされるほどの人が集まってきた。

 

 料理の手伝いに来てくれている二人の女性がオーブンから焼きたてのナンを出してくると、あっという間にあちこちから手が伸びてなくなっていった。

 

「沙紀ちゃん、おかえりなさい。お父様、あなたがいると今日は顔が違うわ」

 

 近所に住む母親の友達がワイングラスを片手に沙紀に話しかけた。

 

「そうですか?... 寂しがってましたか」

 

「そりゃもう。年頃の女の子が家にいるだけで、ぽっとお花が咲いたようよ。一人娘なんだもの、なおさらだわ」

 

 沙紀は相槌を打って微笑みながら、頭のなかでは幸平のことばかり考えていた。

 

 まだ仕事をしてるんだろうか。それとも、ここに来ることにためらいがあるのだろうか。

 

 7時を回っても、幸平は現れなかった。

 

 8時になると、そろそろ帰る客が現れ始めた。沙紀の友人たちも帰ってしまった。

 

 沙紀はカレーやサラダの残骸をふと見つめた。心の中に「△」が浮かんでいた。幸平が自分に対して出した最初の答え。自分への第一印象だ。

 

 私は「○」じゃないんだ、やっぱり。

 

 あの人は私のことをそんなに気にかけてはいないんだ。... 今ここにまだ幸平が現れないという事実が、それを表しているような気がした。

 

 涙が出そうになった。 


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