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『7』 シュークリームと、△

 

 幸平は、沙紀とのお見合いの答えを電話ではなく自分でもってきた。美味しそうなシュークリームを携えて。

 

「こんにちは、優子さん」

 

「そう。本当は私と会いたいのね」

 

「ばれましたか」

 

 幸平は優子にならそんな冗談を返せた。

 

 ブースに座ると、手土産のシュークリームとコーヒーが運ばれてきた。

 

「それで。幸平さんのお気持ちは」

 

 優子に真面目に問われると、幸平は口ごもった。

 

「なんかほっとする女性だと思いました」

 

「あら、よかったわ。じゃ... 」

 

 その時、幸平は顔をあげて、優子の目を申し訳なさそうに見た。

 

「他の人とも、会っちゃダメですかね」

 

「沙紀さんのことはどうするの」

 

「今は△じゃダメですか」

 

... 」

 

 優子はしかめっ面をした。普通ならそんなことはさせない。

 いろんな人に会えば会うほど、比べて悩み、結局どっちつかずになってしまった例が過去にあったからだ。

 

 でも、確かに幸平にとってはこれが初めてのお見合いだったのだった。 

 

 それにあまり恋愛経験も豊富ではなさそうだ。初めて出会った相手といきなり決めてしまうには、不安もあるのかもしれない。

 

優子は幸平の心の底にある誠実さを信じることにした。

 

「あまりこんなことはしないんだけれど、他の方にも一度お会いになりますか」

 

「はいっ」

 

 幸平は勢いよく返事をすると、自分でもってきたシュークリームを「いただきます」と手にした。

 

 

「そうですか。△ですか」

 

 幸平の返事を聞いた沙紀の声は静かで淡々としていた。しかし優子はその声の向こうにある落胆を痛いほど感じた。

 

「でも、会いたくないというわけではないですから。何度か会ってみて、気持ちを固めていくという場合もあります。ぜひお二人で会ってみてください」

 

「わかりました。ありがとうございます」

 

 電話を切ろうとする沙紀に、優子は急いで付け加えた。

 

「おおらかにね、沙紀さん。彼のこと、見守ってあげてほしいんです」

 

... 」

 

 少し、沈黙があった。それは沙紀がこれからのことを決意するための数秒だった。

 

「山本さん。私は、もう決めてますから」

 

 優子はその言葉に深く頷いた。

 

 幸平の返事は△でも、沙紀の思いが深ければ、この二人の縁は成就する。それはまだ確信ではなく、優子のひそかな願いだった。


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