高島沙紀、32歳。
耳の下でふわっと髪をカールさせた、品のいい色白の丸顔。
4年生の有名女子大を卒業後、いったん大手メーカーの秘書室に勤務していたが、2年ほどで退社、テーブルコーディネーターの勉強をしに上京したという。
東京でさる有名な先生のもとで右腕として活躍していたが、両親のたっての願いで関西に戻り、今は苦楽園の自宅でフラワーアレンジメントとテーブルコーディネートの小さな教室をしている。
実は沙紀の父親は誰もが知る一部上場企業の社長だ。
幸平がエムロードに登録した2ヶ月前の春分の日に、沙紀は両親と一緒にやってきたのだった。
優子はその父親の顔を経済系の新聞などで見知っていた。
あの高島社長が、と緊張したが、先方はもっと緊張していた。
「娘にはやりたいことをさせて甘やかしまして、長いこと遊ばせていたものですから。どうぞよろしくお願いします」
高島夫妻は、深々と頭を下げた。
娘の沙紀も入会することに真面目だった。
「私、弟がいますけど、一人娘でわがままかもしれません。どうぞよろしくお願いします」
そう言って頭を下げた。
一家にはこちらまで背筋の伸びるような気品が漂っていた。優子は高島沙紀にはなんとしてもこの気品に釣り合う相手を探そうと思っていたのだった。
弁護士。ハンサム。世間ずれしていないまっすぐな性格。
いつの間にか人の心にすっと入ってくる人懐っこい加賀谷幸平が現れたとき、一目で高島沙紀の顔が浮かんでいたのだった。
しかし、一つ年上の沙紀を幸平はどんなふうに受け止めるだろう。
沙紀は一つ年下の幸平をどんなふうに受け止めるだろう。
優子にはおぼろげな勝算があった。でもそれは優子自身も、まだうまく説明することができなかった。
写真を並べてみると、とてもしっくりくる。
そのしっくりに勇気づけられるように、優子は受話器をとった。
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