エムロードは大阪だけでなく、京都、神戸の会員も多い。
またそこから転勤して関東に行った会員のフォローもしている。
しかし、ほとんどが、関西圏どうしの人でまとまる。
「ええと、神戸、神戸... あった。神蔵頼子さん」
● 神蔵頼子
● 29歳
● K女学院大卒
● 家事手伝い
● 身長163センチ
● 趣味・旅行、ガーデニング、ジョギング
データだけではその性格まで伝わって来ない。神蔵頼子、という名前自体に若干その意思の強さがにじむだけだ。
「だからデータだけじゃダメなのよね」
優子は眼鏡を少し下げて、目を閉じ、右手で親指とひとさし指で眉間の下のツボを押さえた。
行宏のときにも負けない、神蔵頼子への必死の説得が蘇ってきた。
神蔵頼子は両親の真ん中で腕組みをしていた。
163センチと書いてあるが、もっと大柄に見える。顔は端正な美人で、色は浅黒いが、どこかに品も漂う。
しかしこんなに怒ったように恐い顔をして顎をあげ、おまけに腕組みでは、取り付くしまもない。
服装も今っぽいのかもしれないが、グレーのすとんとしたワンピースの上に、大きなプラスチックの黒いネックレスが重たそうにぶらさがっている。修験僧のようだ。
両親も殺気立っていた。大柄な父親と娘がよく似ている。
父親が言った。
「おたくで3社目なんですよ。前のところは、データだけが送られてきて、1年入会している間にお見合いできたのはたった1回で。期待はずれでした。おたくはそんなことはないと、当山さんがおっしゃるもんで... 」
母親が早口に口をはさむ。
「当山さんのところのお嬢さんも、頼子より二つも上なのに、この間、ここでお決まりになられたんですものねえ。しかも会計士さんで。安泰ですわねえ。当山さんのところはうちの主人の会社の下請けですの。ロータリークラブもご推薦しましてね。まあいろいろね、会社興されるときもご相談に見えてね... 」
「関係ないでしょ、そんなこと」
頼子は低く通る声でズバッと言った。
母親は黙った。
頼子は一瞬、両親をかわるがわる睨みつけ、また天井を向いた。
「とにかく、この子もこの調子なもので」
母親は今度は優子にすがるように言った。父親はたまりかねたようにちょっと声を荒げた。
「頼子っ。おまえを心配してこうやってお母さんと二人で来てるのにっ。おまえもちょっとはその気になれっ」
「... 」
優子は拗ねたように目をぐりんとさせる頼子に、年齢に似合わない子どもっぽさを見つけた。
「ちょっとお父様、お母様、席をはずしていただけますか」
もうさじを投げかけていた両親は、素直に帰り支度を始めた。
腕組みをした頼子だけがそこに残った。
「奥でコーヒーでも飲みませんか」
頼子は肩で大きくため息をついた。
まっすぐ座ってみると、スポーティな感じがするなかなかの美人だった。
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